餡子の行方

風子の独白 パート2

初恋は実らない方がいいっていうけれど、実ったところでなにも変わらなかった。ショーニィは相変わらずイジワルだし、よく苛めるし、、、それにショーニィは相変わらずもてる。一応婚約してるっていうのに、酷い話だ。だけどミッツの話だと、売約済みという札をみると、急にほしくなって損した気持ちになるのが女だから、まだ間に合うモノなら自分の持ちモノにしたいと思うのが女心らしい。なので、婚約は結婚しているわけではなく、なんとなく制限がかかっているけれど、だけどまだ間に合うぞっていうことだから、女たちはこぞって最後のチャンスとばかりに猛攻撃をかけてくるらしい。わたしとしてみれば、佳つ乃さんが会社を辞めてアメリカに行っちゃったっていう話を聞いてほっとしていたのに、今度は、女子の多数攻撃からショーニィを守らなきゃならないっていうのも、なんだかなあ、って思う。第一、ショーニィから未だにちゃんと好きって言ってもらってないんだもんなあ。わたしだけがどんどんどんどん、ますます好きになっていっているのに、、、そのうち、ショーニィとの間で温度差が生まれちゃうんじゃないかとちょっと心配。でも意外だったのが、独身主義者とまではいかないだろうけど、結婚に興味を持ってないと思っていたショーニィがわたしと婚約しちゃうなんて、晴天の霹靂としかいいようがない。これにはさすがのミッツも驚いていたっけ。

『やるじゃん、近衛兄。ほしいものはすぐにモノにする速さはわたしよりすごいわ。』

と意味のわからないことで感心していたけど、はっきりいって世の中の恋人同士のようなラブラブ感っていうか、こうロマンティックな感じがないのが残念な気がする。

『何言ってんのよ!アンタ、首のところに赤いマークつけて、何ほざいてんの?』

最近よく、ミッツには真っ赤になるようなことばかり指摘される。だけどミッツだって幹大と上手くいっているようで何よりだ。そうだ、ダイエットも始めた方がいいんだろうなあ。ショーニィは、わたしが何を食べてもどんなに食べても、腹をこわすなよ、としか言わない。けど、やっぱ男だから、あまりブクブクと太っている婚約者には嫌気はさすと思う。だけどショーニィだって悪いんだ。毎回、甘い物を買ってくるし、週に2回は笠丸谷のドーナッツなどをくれる。これでいつわたしがダイエットできるというのだ。ドーナッツだけは、やっぱりやめられない。だけど、もし無人島に行くとき、ショーニィとドーナッツ、、、どちらかひとつと言われたら、、、、、、うん、やっぱショーニィがいい。ショーニィにどんなにいじわるされても、傍にいてくれるだけで安心だもの。だってわたしはショーニィが一番大好きなんだもん。それに、本当は知ってる。ショーニィは、なんだかんだ言っても、やっぱり優しい。それから最近思い出してしまったことがある。なんでわたしが餡ドーナッツとドーナッツが同じものだって結構大きくなるまで思いこんでいたのかってこと、、、ふふふ、、、思い出したら、ああ、ショーニィらしいなと思った。すごく笑えて、、そして胸がキュンとした。やっぱりショーニィが大好き。




『うわあああん、カンタが食べちゃった。ぜんぶたべちゃったああああ。うわあん!!』
『ふ、ふん!いっこのこした!のこってるもん!のこした!それプー子たべりょ!』
『こら、幹大!なんて食い意地はってる子なんでしょうっ!ごめんなさいね、風子ちゃん。』
『ううん、いいの、いいの、加奈子さん。ほうら、風子、みてごらん?1個残ってるでしょ?食べていいのよ?これ風子のだから?』
『これ、ふうこの?』
『ええ、そうよ!』
『だって、、ショーニィのは?ショーニィのドーナッチュないもん。』
『あ?僕のはいいよ。僕、甘いもん嫌いだから。』
『いやああああ、ショーニィにもあげないと、かわいそうだもん。ドーナッチュキライな子いないもん。ショーニィの分ないとかわいそう。うわああああん。』
『風子ちゃん、本当に奏は甘い物嫌いだから。だから大丈夫よ。一人で食べていいのよ。』
『いやあああ、ふうこ、ショーニィと、はんぶんこするの。ね?ショーニィとはんぶんこね?』
『え?』
『ふうこのはんぶんこあげんの!』

『おい、風子!』
『なあに?』
『あのな、先食べちゃったから。だから残りは風子のだから。』
『え?なんで?ドーナッチュここにあるよ?』
『だからな?餡ドーナッツ知ってるだろ?』
『うん!ふうこ、甘い餡子も、しゅきっ!』
『そう、その餡ドーナッツな?真ん中に餡子が入ってんの。だから、真ん中食べっちゃったから。』
『へ?』
『だから、あとは風子の分だ。真ん中の餡子食っちまって悪かったな?さあ、だから、お食べ、風子。』
『え?そうなの?ショーニィ、もうたべちゃったの?』
『ああ。』
『うわあああい。いっただきまあああす。』
『美味しいか?』
『うん、おいしいっ!しゅっごくおいしい!!』
『そうか、美味いか。よかったなあ。風子。』
『うん。よかったねえ。うふっ。』



『かわいいわね。風子ちゃん。ふふふ。わたしも娘がほしかったわ。』
『あら、加奈子さん、奏君、優しくて素敵な息子じゃない?将来、二人が結婚すればいいのに。』
『ふふふ、そうね?そうなるといいわねえ。』
『いいわねえ。ふふふふ。』



〜おわり〜





餡子の行方をご愛読いただきましてありがとうございました。
いつになるかわかりませんが、スペシャルでお会いしたいなあと思っております。

『会える日まできっと痩せてますから〜〜』
『痩せなくていいよ!』

風子&奏からの一言でございました。vvv





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