黒猫の受難

オマケ

涼は絶対にゆり子の波を見逃さない。何度抱いても飽き足らず、ゆり子の全てがほしくてまた今夜も無体なことをさせてしまう。

「ちょ、、し、したら、さん、、んん、、、」

結局土曜日の朝、ゴハンをトイプーいや牧川と一緒に食べたあと、牧川は空気を読んでそのまま帰っていった。勿論涼は、ゆり子の部屋で楽しい居残りだ。まだ日が出ているからと、ゆり子は拒み続け、やっと晴れてゆり子の裸体に触れることができたのが、その夕方だった。ひとしきり抱いて、疲れたゆり子を慮り、夕食は出前をとった。そして、今、また性懲りもなく、涼はゆり子を攻め立てているのだ。

「し、、した、ら、さ、ああ、あん」

初めの頃と比べたら、随分声を出してくれるようになったが、それでもまだ遠慮がちなゆり子の声。もっともっと乱れてしまえばいい、涼は、必死に己を暗闇の細いキツイ中で擦りあげていく。

「い、や、、、」

ゆり子の切羽詰った声に、情けないのだが、涼がたまらない声をあげた。

「うっ。」

いつだってゆり子を追い詰めたくても、彼自身も我慢の限界で、、、それでも必死に歯をくいしばった。

「んんん、」

暗闇の中に浮かぶゆり子のほっそりとした白い裸体はとてもナマメカシイ。涼は、昔から情欲を満たす為のセックスありきで、いつでも、わかり易い肉感的な女を抱くことが多かった。柔らかくたわわな胸や、大きく広がる丸い腰、もみしだきながら、肌を滑らせながら己を高めていく。決して自分は乱れずに、相手を翻弄させて狂わせて、自分の高ぶりが程よい頃に爆発させる。それは一種の運動のようで、終われば爽快感があった。だがゆり子との情事は、、、違う。勿論、快楽の気持ちよさはたまらない。それは男の性、、けれど、華奢な肢体を自分の体でおさめ、美しい骨格に指を滑らせゆり子の性感帯をこれでもかと刺激する。彼女の甘い苦悩が顔に表れ、眉間にシワを寄せながら切なく吐息をもらす。その瞬間、いつだって涼の体に電流が走る。会社では絶対にみせないゆり子の弱々しい表情、涼に縋ってくる指先、快楽に罪の意識を覚えながらそれでも抗えないでいる正直な腰の振り、、、、たまらない、、、己を突きながら、彼女の奥へと進むとき、ゆり子の顔が上気して、体がピンクに染まる。

「あああ、あ、、」

息を漏らしながら、涼の顔を見つめるゆり子。涼はたまらなくなり、その唇をふさぐ。

「んん」

(絶対にこんなゆり子を他の男が見ることは許さない。俺だけのモノ、、、)

必ずこんなドスグロイ気持ちが湧き上がる。

「お前さ?もっとメロメロになっちゃえば?」
「あ、何で、、そう、いうこと、」

/パンパンパンパン/

涼は腰を激しく打ち付ける。ゆり子が反論を唱えてしまいそうで、、、だったら、もっともっといじめてやりたい。

「ああ、あああああ、」

そうだ、ここがゆり子の乱れる場所。涼はもっともっと深く深くそして強く突き始めた。

「だ、だ、、だめ、はあ、はあ、あん」

涼の指先がゆり子の美しい背骨の骨格をとらえる。そこがピクリと動き、ゆり子が背中を弓なりにそらす。涼は絶対に目をそらさない。まばたきすらも、ゆり子の一挙一同を見逃しそうで怖い。

(俺の女、俺、、の、、、)

ゆり子を愛し始めた涼は、これ以上もなく強欲に、これ以上もなく独占欲が強く、嫉妬深い男になっていく。限界が近い。ゆり子の表情が切なげに揺れる。口から漏れる恥らう声に、涼の高ぶりも一緒にのぼっていく。

「気持ちいい?倉沢?言って?どこがいいの?」

ゆり子は、恥ずかしいのか涼を睨む。けれど、その瞳は、今までとは違う。いつだってゆり子は涼を睨んでいたけれど、今のゆり子にはどこか甘くどこか甘えているような、そんな瞳の色が浮かんでいる。

「言えよ?」
「ああ、気持ちが、ああ、そこ、」
「どこ?」

涼は口角をあげながら、意地悪な質問をしていく。だが涼だって限界が近く、やもすれば危うい快楽のラインを行き来しているのだ。それでも涼は、もう知り尽くしたゆり子の体をジワジワと責め続けていく。

「いや、もう、、おね、がい、、し、したらさん、、」
「イッテいいよ? 倉沢?」
「ああ、いく、、んん、、あああああっ」

ゆり子の嬌声があがるのと同時に涼の高ぶりがシンクロしていく。二人は我慢出来ずに己の欲を一気に吐き出す。ゆり子の体がピクン、ピクンと痙攣を帯び、恍惚とした表情には、艶があり色香が漂う。安心したように、涼の体も一瞬止まり、ドクン、、、全てを吐き出した。


「やっぱり、、、設楽さんって綺麗ですね?」

ゆり子は涼の顔に見惚れたようにそうつぶやく。前にもそんなことを言っていた。

「な、なんだよ、、、」
「わたし、、、イクトキの設楽さんの顔、、色っぽくて、、、好きです。」

涼は珍しく顔を赤くした。情事を終えた女にそんなことを言われたのは生まれて初めてだ。どんなときでも主導権は涼が握っていたはずだ。女がイク顔を見ながら、憎たらしいくらいの余裕があって、己の情欲を放っていた。なのに、、ゆり子を抱くときは、いつだって涼には余裕などなくなるのだ。ゆり子を攻め立てるときだけ、彼女は弱くて涼の腕の中で溶けてしまいそうで、、なのに、ことが終わると、凜としたゆり子がそこにいて、涼はまた不安になってしまう。

(俺は、、コイツには、やられっぱなしなんだよなあ、、、)

「なあ、お前、牧川に、、どんな風に言ったの、俺たちのこと?」

まだ体の火照りもおさまらないうちに、ゆり子が自分の手から逃げ出していかないようにと、涼はゆり子を言葉で攻めていく。

「え?」
「言ったんだろ?俺たちのこと。」
「あ、、はい。」
「何て?」
「何で、そんなこと聞くんですか?」
「え?だって聞きたいでしょう?普通。」
「教えません。」

キッパリ言われた。まったく強情な女なのだ。ゆり子の口から言わせたいというのに。

「ふうん、体に聞いてもいいんだけど?」

涼の長い指先が、軽く、ゆり子の首にツツと触れながら下へじらしながらゆっくりとおりていく。

「あ、、や、」

終わったばかりの余韻が未だ続く中、全てが感じやすい体のゆり子がたまらず声をあげた。

「もう、、や、、です、、」
「何?俺、ただ、倉沢の肌に触れただけで、、あとは別に何もしてないけど?」

言いながらも指先は流れるように彼女の体を羽のような軽さで触れていき、可愛らしいピンク色の乳首をからかう様に爪で刺激する。

「や、や、、ああっ、、」
「あれ?もうやらないんだよね?また感じてる?倉沢って、いやらしい?」

ゆり子の瞳が潤む。

「意地悪です、、よね、設楽さん、」

ゆり子は瞳を潤ませながら涼を睨む。唇をきゅっと結んでいるのだが、何度も何度も涼からの口付けで、すっかり膨れ上がったその唇がぷるりと震えた。

「たまんねえな?」

優しい声でそうつぶやいた。

「あ、、」

涼の唇が彼女の口を覆い、優しく音をたててキスをする。

/チュッ/

「たまんないだよな。」

/チュッ、/ /チュッ/

子供にでもするようなついばむキス。けれど、それが二人の親密さを増してゆく。ゆり子もやがて観念したように、涼のキスに応え始め、彼女の指が優しく愛おしそうに彼の髪に触れる。

「設楽さんが好きな気持ちが、、溢れてきて、、
もう止まらないから、、って言いました。」

「えっ?」

恥ずかしそうに、それでも彼女は決して涼から目をそらさなかった。涼の胸がドキリとなった。

「好きな気持ちが枯れない限り、、多分、他に目がいかない、、って、」
「うん。」
「牧川君には、そう言いました。」
「ありがとうな?」
「はい?」
「こんな俺を好きになってくれて、、」
「え?」
「最低だったしなあ、俺って、、、」

ゆり子の指は実に気持ちがいい。涼は髪を撫でてもらいながら、甘えるように、されるがままに、瞳をうっとりとさせた。

「ふふふ。」
「何だよ?」
「だって、設楽さん、やっぱり猫みたい。」
「あ?俺としては肉食系がいいんだけどなあ?
それこそ豹とかのほうが、かっこいいじゃん?」
「大丈夫ですよ。猫だってお肉食べますもの。ただし、缶詰の、ね?」
「ふん。」

まあいいや、そんな風に涼は思うのだ。結局なんだかだ、ごちゃごちゃ言っても、男は女に飼われていた方が楽チンでいいのだろう。

「じゃあ、もう一回しようか?ご主人さま?」
「え、、ええええ??」

そう言ってじゃれる涼は本当に気まぐれでツンとした黒猫のようだ。すっかりゆり子の部屋にも馴染んで、ごろごろと喉をならしている。

(俺って結構、性欲強いんだなあ、、)

ゆり子とつきあってからというもの、何かしらと新しい自分を発見する。去るものは追わない淡白なはずだったのに、性欲、独占欲の強さも人並み以上、諦めの悪さは天下一品、冷静だと思っていたその下に知らなかった熱情が渦巻いて、嫉妬の炎がメラメラと燃え上がる。ちょっとしたことで不安になって、見えなくなれば姿を探し追い求めてしまう、、今日もまた、新しい何かの発見があるわけで、結局、ゆり子といれば涼は退屈しないのだ。




ー おわり −




読んでいただいてありがとうございました。処女落ちの話は不定期更新で短期連載を考えています。そのうちまたお目にかかれますように。
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